ドクタービジネスソリューションズ株式会社/DoCTOR税務会計事務所 代表 田端 秀寛
全8回の連載です。第2回:7月4日、何も起きなかった

前回は、6月の通貨をめぐる矛盾を3つの層に分けて整理しました。今回は、その続きが7月にどうなったかです。

① 署名式のない記念日
私は6月号にこう書きました。
> 仮に7月4日に何らかの宣言があったとしても、それは移行の完了ではなく開始の合図だ
現実は、開始の合図すらありませんでした。
建国250周年の当日、全米で祝典が行われ、大統領が演説しました。通貨に関する宣言はありません。
そしてCLARITY法案です。ホワイトハウスは、この日までの署名を目標にしていました。 しかし7月4日の時点で、法案は上院の議事日程に載ったまま、本会議での採決日程すら決まっていませんでした。
署名式のないまま、目標の日が過ぎ去ったのです。
② 止まったまま、8月10日へ
その後も動いていません。
7月22日、共和党が妥協案を出しました。大統領の暗号資産による収益を制限する、史上初の倫理条項を含む案です。民主党は数時間で拒否しました。
翌23日、上院の院内総務が記者団にこう語ります。「8月の休会前に仕上げるのは難しい」。
残る争点は3つです。
倫理条項 ― 大統領一族の暗号事業への関与をどう扱うか
604条 ― 暗号通貨をめぐる刑事捜査への影響。検察の団体が懸念を表明しています
ステーブルコインの利回り ― 取引所の収益構造に直結します
上院で法案を通すには60票が必要です。共和党53名が全員賛成しても、民主党から7名前後を引き込まなければなりません。
関係者が最終期限と見ているのは、8月10日です。
③ 制度が止まると、今度は価格が戻った
一方で、暗号資産の価格は7月に入って戻しました。
6月は制度が進んで価格が落ちた。7月は制度が止まって価格が戻った。
正反対の動きです。ここから言えることは、はっきりしています。
資産の価格と、制度づくりは、別のレーンで動いている。
価格の暴落を見て「この分野は終わった」と判断するのも、制度の前進を見て「価格は必ず上がる」と判断するのも、層の混同です。狼狽売りと高値づかみの、両方を防ぐ視点として覚えておいてください。
④ 「外れる条件」の1つ目は、まだ成立していない
6月10日に、自分の見立てが崩れる条件を4つ書いておきました。その1つ目がこれです。
> ①CLARITY法案が上院本会議で否決される
7月末時点で、否決はされていません。止まっているだけです。
否決と停滞は違います。否決なら見立ての前提が崩れますが、停滞なら「なぜ止まっているのか」という問いが残る。この問いは、第6回で詳しく扱います。
そして8月10日にどうなるかは、この連載が終わった後の特別号でお伝えします。

次回:8つの秩序は、いまどこにあるか
エネルギー、安全保障、国際機関、中東。戦後80年続いた仕組みの現在地を確認します。

【注記】
CLARITY法案の7月
6月1日に上院立法カレンダー423番に登載。7月4日時点で本会議投票の日程・討論終結動議ともになし。7月22日に上院共和党が倫理条項を含む修正テキストを公表したが、民主党は数時間で拒否。7月23日にスーン院内総務が「8月休会前の成立は難しい」と発言。604条については全米地区検事協会が懸念を表明。市場が織り込む年内成立確率は6月上旬の55%から32%前後へ低下。7月上旬には200社超の暗号関連企業が上院に採決を急ぐよう書簡を送っている。
7月4日
7月3日に「独立宣言採択250周年」の布告に署名。7月4日、ワシントンで大統領演説(当初21時45分予定が23時に)。ホワイトハウス主催の集会は「Rededicate 250」と銘打たれた。同日、ゼレンスキー大統領とプーチン大統領の双方と電話会談。
暗号資産の価格の回復
7月20日時点の時価総額は2.28兆ドル(6月4日は2.18兆ドル)。うちビットコイン1.29兆ドル(約56%)、ステーブルコイン3,050億ドル。

本稿の内容は特定の投資・資産運用を推奨するものではありません。具体的な投資判断は専門家にご相談ください。
ドクタービジネスソリューションズ株式会社/DoCTOR税務会計事務所 代表 田端 秀寛(たばた・ひでのり)