《前回より続く》
 
社長の顔色が変わった。。
請求書綴りの中の一部が計上されていない。
小口のメンテナンス工事がほとんどであったため、
現金での回収は想像に難くない。。
 
社長:「そ、それは。。」
 
また、外注費の架空計上も出面帳から見ると一目瞭然であった。
いずれも、手の込んだものではなく、税務調査初心者の調査官でもわかるものであった。
少しずつ、社長に質問を繰り返して行くこと1時間弱。
どうやら、資金繰りに困っており、簿外で回収していたとのこと。
 
田端:「社長、お気持ちはわかりますが、結局重加算税や
    延滞税を払うと元々の税金より高くなりますよ」
    「税理士の先生には相談されたんですか?」
社長:「いや、先生には言ってません。相談にあまり乗って
    もらえないんですよ。いつも事務員の方がこられて、
    通帳と現金出納帳を預かって帰るだけで、、、」
 
田端:(絶句)
事務所それぞれのやりかたはあるとは思うが、請求書などを監査するなり資金繰りの
相談に乗るなり、なんなりとこうなるまでに手は打てたはずなのに。。。
 
結局その社長は、過去5年間の本税及び重加算税・延滞税を含めて数百万の出費を強いられ、
借入で賄うといった顛末であった。
(この頃はまだ、銀行が積極的に貸してくれたから良かったのだが、、、)
税理士は確かに税金の計算をすることが本職であるが、
試算表から資金繰りを読んでみたり、違和感がある場合はヒアリングをしてみたりしながら、
経営者の相談に乗ることが必要なのでは、、、と考えさせられたものである。
多くの小規模企業の経営者は税務や会計に関しては素人に近いのが現状である。
故に、(失礼ではあるが)ベストもしくはベターな手段を選べずに
手っ取り早く「圧縮」といったケースが後を絶たない。。。
ベストな方法を知らずに損をして欲しくないと、強く心に期した出来事であった。。。