「どうしてわかったんですか?」
「尾行してたんですか?」
青ざめ引きつった顔で発したこの一言は
とある銀行ロビーで納税者との会話の一部である。
 
この納税者は脱税資金の大半を割引金融債で隠匿していたのである。
 
 
しかし、実地調査の翌日には、
・その割引金融債を購入しているという事実
・貸し金庫にそれらを保管しているという事実
田端は偶然ながら辿り着いたため、納税者が驚愕しながら発した一言である。
 
その経緯は下記の通りである。
・前日午前10時に通知なしで実地調査に着手
・総勢約10名での調査
午前中に、ほぼP/L面に関しては想定どおり脱税の事実は把握でき
目鼻はついていたが、問題はどこに使ったか隠したか。。。
そんな展開の中、
2階の事務室に上げてもらった時、
無造作にちらかったキャビネットの中に
某銀行からの封筒があるのが田端の目にとまった。
 
割引金融債を取り扱っている銀行である。
 
隠匿の恐れがあるので、その場では質問しない。
翌日に当該銀行の大阪府下全支店をシラミ潰しに調べたところ、
とある支店に口座を開設している事実を把握した。
当該支店へ急行したところ、
納税者とロビーでばったり出会ってしまった。
ということである。
 
田端も驚いたが、納税者の驚きは計り知れない。。
 
 
「バレるとまずいと思って貸し金庫の中身引き上げに来たんです・・・
普段は節約のため特急には乗らないんですが、今日は特急に乗ってきました。」
 
仕事とは言え、何とも切ない話である。
 
その後、1時間にわたり納税者に「脱税は割りに合わない」ことを説明し、
「もうこんな思いは2度としたくない。ちゃんと納めます。」
と言ってもらったのが、田端の最大の収穫であった。
(あの社長、頑張っておられるかなぁ。。。)