「現況調査」とは?
読んで字のごとく、現況を調査するのである。
では、何の現況なのか?
調査日現在の、現金管理の状況や、レジスター周辺の状況や、
その他調査官が、今現在をその目で確認する必要がると感じたもの全てが対象となる。
調査官の判断にて随時実施されるものであるため、ある意味、タチが悪い。。
どうタチが悪いのかというと。。。
ここからは田端の思い出話である。
とある、小さな建設業の調査の時のことである、
社長の事務室=書斎であったため、個人的なものも、
仕事に関連するものもそこには混在していた。
調査は順調に進み、何となく大きな問題はなさそうであったが、
請求書の管理状況が良くなかったためそれが不可抗力であるのか、
意図的なものであるのかを確認する為に、進行年度の帳票監査をすることとした。
社長に進行年度の記帳状況と帳票類の保管場所等を聞き取り、
いざ「保管状況」を確認することとした。
ここで、帳簿に記載されている「請求書」とそうでない「請求書」などがあれば、意図的である。
田端は、いつものように
田端:「こちらの引き出しも何が入っているか確認させて頂いてもいいですか?」
社長:「どうぞ」
田端:「こちらもいいですか?」
社長:「ああ、どうぞ、どうぞ」
なかなか協力的である。これは不正はなさそうである。
ふと、目線を変えた時、デスクの脇に小さなサイドボードがあった。
デスク脇であったため、万一の把握漏れを避けるため、
田端:「念のためこちらもいいですか?」
社長:「そこはあかん。」
来た!!抵抗することは見られるとまずいものがそこにある!!
 
来た!!抵抗することは見られるとまずいものがそこにある!!
 
前編の続きである。
田端:「社長、まあ、そうおっしゃらずに確認させて下さい。」
社長:「見せたないもの入ってるんやから見せたない!!」
田端:「見せたくないものですか?」
   ・・・・・・・
調査官は「見せたくない」と言われると逆に「どうしても見なければならない」と
反射的に思ってしまう悲しい人種である。
田端:「社長、見られるとまずいものですか?」
社長:「まずないけど、見られたくないもんや。私物や私物!!」
田端:「我々は、守秘義務がございます。社長のおっしゃるとおり
     私物であれば、口外しませんので拝見できませんか?」
社長:「・・・」
田端:「こちらのお部屋は、事務室としても使用されておりますので、是非とも確認させて下さい。」
   
    「なぜかと申しますと、現在調査しております帳票類には信憑性が乏しいため・・・(後略)」
と張り詰めた空気の中、説得を繰り返すこと、小一時間。
社長:「わかった。そこまで言うんやったら見せたるわ」
と、社長は自らの手で、そのサイドボードにある引き出しを開け始めた。
・・・
中から出てきたのは、使用済み領収書控・請求書控と、アダルトビデオ数本・・・。
田端:「社長、これは私物なので結構です。」
    「こちらの書類は?」
社長:「・・・」
と、小口売上に係る帳票類を把握したものの、
本当に私物も保管されており、社長の頑強な抵抗の理由が理解できた。。。
ちなみに、出てきた帳票類は不正の類ではなく、進行年度の使用済み帳票であった。
これは、レアケースではない。
結構、何気なく「私物」を机の引き出しや、キャビネットの中に保管しているものである。
調査官は、「抵抗」されると、使命感に燃えるので、
見られたくない「私物」の類は、ケジメをつけて他の場所に保管しましょう。。
さて、現況調査に関するイメージは既に掴んで頂いたとは思うが、
まだまだ現況調査の対象は、枚挙に暇が無い。
また、不正を把握するプロセスの中に必ずと言っていいほど
「現況調査」は絡んでくるのである。
例えば、
◆電話帳
最近は携帯電話があるため、あまり使用されなくなったが、
以前は電話帳を良く見せてもらったものである。
当然のごとく、取引先や、銀行など網羅されており、また、
公表と公表外の取引先や銀行をセパレートして作成されて
いるケースは少ない。
そのため、電話帳から取引銀行などが網羅され発覚した
ケースも時々見かけられるのである。
◆レジ周り
飲食業の場合など、必ず現況調査させていただく場所で
ある。特に通知なしの調査の場合、
現金仕入の納品書や、領収書などが無造作に保管されて
おり、仕入除外→売上除外の把握には最短距離となる。
など、国税当局の過去の調査のノウハウから色々な場所やモノがが「見るべき」とされている。
最近では、パソコンの中身までチェックするのである。

肝心なことは、それらを「見せて欲しい」と調査官が言い出した時、
「見せられない」と言ってしまうと、
調査官の闘争心(?)に火をつけるばかりでなく、誤解を招いたり、
最悪の場合銀行や取引先へ反面調査という事態を招いてしまう。。
次回は、税務調査の思い出話~人の口に戸は立てられぬ~をお送りします。